怖い自分

今日、歯医者さんで インプラントを してもらった。

 

前々から 前歯3本がグラついていて 治療してもらってたんだけど 先生に

 

『インプラントするにも骨がしっかりしていないと できないから やるなら骨が しっかりしている今のうちの方が いいよ』 と言われ 決意した。

 

確かに 前も奥歯が抜けて

『いよいよ俺もインプラントに しなきゃ駄目かぁ』

と 調子こいて 先生に相談したら

『骨が薄すぎるからインプラントは出来ないよ』と言われ

思いもせず まさかの入れ歯に なってしまい

もう これ以上 入れ歯には したくないので  今回 インプラントを お願いした。

 

一ヶ月程前に

 

ぐらついてる前歯3本の中から『この歯 を やります』

 

と画像を見ながら 丁寧に きっちりと説明を受けていたのだが うわの空で 俺にしてみれば 3本のうち どの歯でもよく

そんなことより

歯を抜いて骨にドリルで穴をあけて土台を植え込み その土台に歯を付ける というインプラントの行程が恐ろしすぎて その恐怖心の方が強くて 3本のうちのどれでも いいや という思いになってしまい いい加減に説明を聞いていたのかもしれない。

 

そして

日時が決まり それからというもの

『あと何日でインプラントだ。 あと2日でインプラントか』と

毎日 インプラントのことが頭を離れず ビビリっぱなしの状態で 結局 昨日は 一睡もできずに 歯医者さんへ 向かった。

 

歯医者さんの玄関には

『今日はインプラントの手術のため 午後からの診察になります』と書いてあった。

『手術!?』しかも『貸し切り!?』

ますます ビビってきた。

 

逃げ出したい気持ちをグッと堪えて、もう予約時間だし 腹をきめてビビってないふりをして 中へ入った。

 

『座ってお待ち下さ〜い』

 

と言われたけど 座っていられない。

心を落ち着かせようと トイレに逃げ込んだ。

『はぁぁぁ〜 ふぅぅぅ』っと 深呼吸してみても もうダメだ。

完全にビビってる。

 

待合室に戻り落ち着かないままウロウロしていると

カラカラカラ〜っとドアが開き 『診察室へどうぞ〜』と看護師さんの優しい声で呼ばれたのだが  もう悪魔のささやきにしか聞こえない。

 

あぁ〜もう逃げられないんだなぁ。。と思い

覚悟をきめ診察室へ入った。

 

目に飛び込んできたのは よくドラマなんかで観る 医者がボクシングのファイティングポーズのように両腕を上げ 『それではオペ始めます』的な先生の姿だった。

 

その姿を見てビビってるのがバレたのか 先生は 

 

『ただの コスプレだから』と 。。

 

確かに面白かったのだけれど もうそれどころではなかった。

 

診察台へ案内され ドキドキがMAXになったところで オペ 開始。

麻酔され 唇が モワ〜ンとしてきて

『いよいよかぁ  怖いな〜』と思いながらも

『俺も男だっ!』と先生に身を任せた。

 

ウィ〜ン シュルシュルシュル〜っと歯医者独特な音を聞きながら

 

『あの歯 いじってるなぁ』『あの歯とも お別れかぁ』『今まで ありがとう!』

 

などと思い あの歯に感謝しながら ふと気付いた

 

『あれっ!? 全然 痛くないじゃないか』

あんなにビビって泣きそうになってた自分とは 打って変わって

『さすが俺様!余裕じゃんか』

『まぁ こんなもんだろ』

と 手の裏を返し 心の中でニヤつき

『もう こっちのもんだ〜』と余裕こいて半分眠りかけた その時

 

『そろそろ 終わるから 頑張って!』と先生。

 

えっ早っ!?

『いつの間に抜いて いつ 骨に 穴 あけたの?』と ほとんど痛みも感じないままオペ終了。

急に ビビっていた自分が恥ずかしくなってきた。

 仮歯をつけてもらい 助手さんから 手鏡を渡され 歯を見た。

『うわ〜 全く同じ歯だ〜』『すげ〜なぁ』『色まで一緒なんだぁ』と関心しながら手鏡を返した。

 

しかし さすがに 歯を抜いたり骨に穴あけたりした後なので 全く痛みが ないわけではない。

じんわり痛みがでてきた。

 

『痛み止めも出るから心配ないよ』と言われたものの なんだか治療した歯と違う歯が痛い気がして尋ねると

 

『終わったばっかりだし 麻酔も切れてきた頃だから』と

 

まぁ 激痛でもないし こういうもんだろうなぁ と あまり気にも留めず 痛み止めを貰って 家に帰った。

 

終わって ホッ!としたのと 一睡もしてなかったのとで 一気に睡魔に襲われ  治療してもらった歯も見ずに スーッと眠りについた。

 

一寝して 目が覚め

 

『どれどれ オイラのプチ整形は?』と思い鏡を見た。

 

『ん〜 しかし 上手いことやるもんだな〜  見事に色も形も抜いた歯と おんなじ〜』

 

と助手さん から手鏡を渡された時と同じく関心していて

 

そういえば  あの痛みのあった あの歯は?と思い唇を押し上げてみると

『あぁ やっぱり こっちも治療してくれてたんだ〜』『それで痛みが残ってるんだぁ』 と至れり尽くせりだな と思い先生に感謝していた。

 

すると用事をたしに出掛けていた妻が帰って来たので 自慢げに『ほら〜』と歯を見せてやると

『やっぱり仮歯だと色 違うもんだね』と

 

『えっ!?どこ見て言ってんだよ?』

『前の歯と おんなじだよな?』と聞き返しても 

 

『見れば わかるよ』『こっちの歯やったんでしょ?』

 

『えっ!?うそっ!?』『じゃあ こっちの歯 治したってこと!?』

 

ん!? なんだか 意味不明になってきた。

もう一度 鏡を見てみると 

『あれっ!?』『この歯やったんじゃねぇの?』『じゃあ この歯は何?』『この歯は何もしてないのか!?』

慌てて 先生に電話してみた。

 

『ガガ〜ン』

 

やっぱり妻の言う通り 痛みのある あきらかに色の違う所を治療してたみたいだ。

 

自分が治療してもらったと思いこんでいた あの歯は なぁんにも いじってない正真正銘の自分の歯だった。

どおりで なんも変わってないわけだ。

それよりも なんで気付かないんだオレ。。

ドリルで穴あけられてるのに。

情けない。。。

 

先生の最初の説明で

 

『この歯を やります』を

 

ちゃんと聞かずにいたからだ。

勝手に 自分で この歯を やるんだろうな?と思い込み 治療中も てっきり その歯を やっているんだろう って。。 

まさに 自分の 思い違いの まったくのアホ。

あぁ情けない。。

 

しかし そんな自分のバカさ加減に

言葉にならない笑いが 止まらない。

 

電話越しに先生と 一緒に笑った。

 

あ〜 

インプラント こわ〜い と思っていたけど全然 怖くなかった。

むしろ 自分が怖い 。。

1時間くらい口 開けて 歯 抜かれてんのに 。。。

 

しかも今朝

『この歯で ご飯食べるのも最後だなぁ。。』

『お世話になりました。今まで どうもありがとう!!』と

少し淋しくなりながら感謝してたのに その歯は まだある。

お別れも 出来ずに逝ってしまった 歯。

ごめんよ。。。

 

 

 

あ〜 自分が怖い。。。