あっ!?お母さん!!

先日 私の兄から

”お母さんの人形見つかったから お前が預かるか?”

とメールがあった。

その瞬間

ゾクゾクっと背中の中を何かが走り嬉しさとワクワクと少し怖さ を感じながらも

”預かる”

とメールを返した。

 

その お母さん人形の話について少し。。

 

話は 30数年前に さかのぼりますが 当時 小学生だった私に親父が新聞の切り抜きを持ってきて 

 

”これを お母さんの誕生日プレゼントにしたいと思うんだけど どう思う?”

と相談してきた。

 

私は その切り抜きを見て 本当だろうか?と少し疑いながらも面白そうだったので

”うん うん いいと思う そうしよう!!”

と うなずき 親父は

 

”お母さんには内緒だぞ”

 

と男の約束をした。

 

その切り抜きの内容は?というと

 

「写真があれば その人そっくりの人形を作ります」

 

ということだ。

いかにも怪しい。

しかも今のようにインターネットも無く 問い合わせするにも不便で 黒電話のダイヤルを回すしかなかった時代だったので 親父はダイヤルを回し何度も質問して聞いていた。

 

電話での話も まとまり あとは写真選びだ。

私に

 ”どっちが いい? この写真でいいよな?” と

少々 浮かれ気味に親父もドキドキ ワクワクしていたんだろう。

 

ようやく 話も写真も決まり あとは人形が届くのを待つだけだ。

その届くまでの数日間

”お母さんには ばれないようにな”と

親父と目で会話をしていた。

 

そして いよいよ お母さん人形 到着 !!

私も親父も もう少しで大喜びするであろう お母さんの顔を想像して ニヤついていた。

大きな箱を 目にした お母さんは

”わ〜!?”と箱の大きさにビックリしたのかサプライズにビックリしたのかは わかりませんが 嬉しそうに目をキラキラと輝かせていた。

”しめしめ”と また親父と目で会話をし

 

”オメデトウ!!”

 

と いざ 箱 オープンっ!

 

”わぃっ 何これ!? 気持ち悪い!!”と

お母さんは箱の蓋を閉めてしまった。

 

”あれ!? なんで?”

 

私と親父は キョトンと目を見合わせて言葉を失っていた。

 

その時の親父の ちょっと淋しそうな顔と お袋の ちょっと怒った顔。

経緯を説明しても

 

"なんで この写真つかうの?もっと まともなの あったでしょっ!全然 似てないしっ!”

 

と ブツブツいいながらプンプン していた。

 

とは言いながらも 嬉しそうでもあり 何度も蓋を開けては閉め 開けては閉め と繰り返し 抱きかかえて 前を見たり後ろ姿を見たり 自分が二人居るような不思議な気分に戸惑っていたのだろう。

そうやって暫く眺めていたけれど 結局

”気持ち悪いっ”

と箱にしまってしまい あれから30数年 箱の中で眠ったまま 開けられることもなくどこに しまっていたのかもわからなかった この お母さん人形ですが 今になって見つかり 私の所へ やってきたのです。

 

18で両親の元を離れ たまにしか実家へ帰らず 一緒に酒を飲むこともできないまま逝ってしまった親父。

その親父が亡くなって私は青森へ帰ることを決意し お袋と2人の生活になっても いつもケンカばっかりで お袋が亡くなるまでケンカしていたバカ息子だったので私にとっての両親との数少ない この思い出の お母さん人形。

 

そして30数年が経ち 今度は私が この思い出の お母さん人形の箱を開ける時がきた。

 

お母さん人形が見つかった! とメールがきた時点で その思い出が よみがえり 涙が溢れ出しそうだったのに 兄が人形を運んできてくれた時 店は営業中で お客さんも数人いたので 今 開ければ絶対に泣いてしまう と思い 店が終わったら開けようと思ったけれど お袋が亡くなって12年、親父が亡くなって20年、この お母さん人形は30数年 会っていない。

 

今 すぐ会いたいっ!この箱の蓋を開けると 両親に会える気がして その衝動を抑えきれず 蓋を開けてしまった。

 

その瞬間

一気に 全身を何かが駆け巡り 目頭が熱くなり じわぁ っと涙が こぼれそうになったので ほんの一瞬で蓋を閉めた。

場合は違うけど お袋と一緒だ . . .

 

その後は やっぱり仕事に身が入らず お客さんにも迷惑を かけながらも なんとか その日の営業を終了した。

 

早々と片付けを済ませ お母さん人形を箱から出して テーブルに座らせ グラスを3つ並べて 再会に乾杯した。

 

思わず涙が溢れ出し 思いっきり泣いた。子供のように すすり泣きした。

 

その後は

笑ったり 謝ったりしながら 今まで話せなかったことや これからのことを両親と心で話し合い とてもスッキリとした時間をすごした。 

 

一時間くらいだろうか?

なんとも言えない 時間だった。

 

お母さん人形は 今 部屋にいるので

”髪を切れ”

”ヒゲを剃れ”

と言っているような気がします。

 

ん?